2012年2月18日土曜日

乱読&平行読みのすすめ

先日眠れなくて読みかけの本を片付けることにしました。
私は超乱読なうえに読み終わる前に次々と読み出すので、ほおっておくと5〜6冊平行してるなんてことがざらにあります。なのにまた次を買ってきてしまったり。で、とりあえずこの日は4冊を読了させました。そのうちの2冊をご紹介します。




ザ・万歩計 (文春文庫)
(万城目学)

イヤー良かった。家人が面白いとの噂を聞いて図書館で借りてきたものを仕事の行き帰りとその日の夜で一気に読んでしまいました。「鴨川ホルモー」や「プリンセストヨトミ」などを書かれている万城目学氏のエッセイです。かなり独特のテンポと切り口が秀逸。デビュー前の様子等も面白いのですが、雑考的なものは相当に引き込まれます。例えば関西出身の氏が大阪弁について語る「大阪について私が知っている2、3の事柄」では
”ものすごいおもしろい”、”ものすごくおもしろい”の考察(この二つは関西では同じ意味だが、関東では別の意味)はわざわざ知人の大阪人に確認してしまいました。
更には旅行記になっている「マジカルミステリーツアー」のトルコ部分をバスで読んでいてついつい声を出して笑ってしまい、周りを不審がらせてしまいました。公の場でこのような醜態を晒したのは初めてかもしれない。(内容はぜひとも本書にご確認を)
昔から椎名誠や村上春樹のエッセイが大好きで、今でもちょこちょこと両氏以外のものにも手を出すのですが、最近どうにも”アタリ”と言えるようなものに出会えていませんでしたが、これは久々のクリーンヒットです。




スリー・カップス・オブ・ティー
(グレッグ・モーテンソン)

もーすごいです。すご過ぎるオトコ”グレッグ・モーテンソン”の活動実録です。1993年K2で遭難した所を助けてもらった事に端を発し、家財を全て売り、イスラムの地(パキスタン、アフガニスタン)に宗教色のない学校を立てて行くお話し(ドキュメンタリー)です。その数は現在では70校を超えているそうです。たった1人から始めて途中からは賛同者も増えて財団となって行くのですが、その過程たるや凄まじいの一言です。湾岸戦争を挟み、イラク戦争前にタリバンに誘拐されたり、CIAに尋問されたり、ワシントンでラムズフェルドにまで会ったりしているのです。実話とは思えないくらいにすごい展開が続きます。かなり分厚い本にも関わらずアメリカで360万部も売れたというのも納得できます。とにかく読んでほしい。
人が行動する事の意味、意思の持つ力を本当に感じさせてくれる珠玉の一冊。




************************



ザ・万歩計の後半で万城目氏がモンゴルへ行き遊牧民になろうとする部分があります。そこで氏は

「日照時間のうち、三時間はメシを食べ、三時間は調理し、二時間は薪を割って、水を汲む。」(本文より抽出)

という生活を体感し、あまりの過酷さにうちひしがれます。
そしてこうつづけます。

「非力な者も、病気がちの者も、動物を扱うことが苦手な者も、農作業が苦手な者も。個体間に現れる偏差を最小限に抑え、誰でもとりあえずはそこそこの生活水準を保ち、そこそこの余暇をえることができるよう、我々のご先祖はせっせと現在の社会を構築してきたのだ。そのご先祖様の成果を否定して、自分探しだ何だとうつつを抜かす私は何というたわけか」(本文より抽出)

この言葉のなんと重い事か...
「大自然の中で自給自足で生活する」
これがどれだけ空疎で独りよがりかを痛感させてくれる。

この部分を読んだ時に「スリー・カップス・オブ・ティー」でグレッグ・モーテンソンが行っている原始的な生活を営んでいる地域に宗教色のない学校を建てて行く事の意味の深さを知りました。教育こそがまさに第一歩という氏の理念は本当に気高く崇高です。近代化させる事の問題点を指摘する人は多いですが、それによって持たされる食生活の改善、医療や福祉の充実などの多大な恩恵を忘れてはいけないと思う。

モーティソンの活動は、ごく単純な考えに基づいている。世界で最も不安定な戦闘地域に、宗教色のない学校を建て、教育、特に女子教育が普及するように支援するのだ。
−ケヴィン・フェダルコ/パレード誌2003年4月6日のトップ記事(本文より抽出)

全く違う本なのにある一点で突然つながる。これぞ乱読の醍醐味です。皆さんも是非ジャンルの違う本を数冊平行して読んでみて下さい。想いもよらぬ発見があるかもです。











ちなみにその時に読んだ他の二冊はこちらです。それはまた日を改めて書くつもりでおります。


0 件のコメント:

コメントを投稿